夏の関西集会(6月22日)での重信房子さんへの質問の回答(追加分)

夏の関西集会(6月22日)での重信房子さんへの質問の回答は映像

で公開していますが,時間内で回答できなかった分について,重信さんから文書での回答が寄せられました。ここに公開させていただきます。

私の話をよく聞いて下さり質問くださってありがとうございます。以下に順番に回答いたします。

重信房子

① 岡田光司さん

「レジュメの1ページ目にどんな戦争下でも武器を持たない人の命を奪うことは許されないとありました。であるならば、昨年10月7日のハマースの攻撃も、武器を持たない民間人を殺して許されない攻撃になるのではないでしょうか。それ以前に歴史的背景があったとしても。もちろん私はイスラエルのジェノサイドに抗う立場です」

答え「もちろんそうです。私も武器を持たない民間人を巻き込んで殺すべきではないと思っています。2つの点で、それに関してこの10月7日について考えています。一つはまず前提としてハマースの攻撃ではなく、パレスチナ解放勢力全員の意思であり、全体の攻撃だという点です。第二にこのデータが,果たしてパレスチナ解放勢力が殺害したという情報が正しいのか?ということです。これはイスラエルの発表で出されているものですが、アラブ側の情報によるとハマースら武装勢力は整然としていて、主に兵士たちを狙ったということです。もちろん犠牲者もあったでしょうが。

イスラエルの報道ですら、慌てたイスラエル兵がめちゃくちゃに交戦したために犠牲者が多く出た、特に音楽祭の場ではそうだったという現場で生き残ったユダヤ人たちの証言が出されています。この情報はハーレツなどのイスラエルの新聞によっています。

後に調査され,より正確に発表されるでしょう。リッダ闘争と同じように、これも交戦を一方的にハマースと言う形で断罪していると言う点を見逃すことができません。またもう一つの点は、パレスチナ側から見るとこれは何百倍も殺され、傷つけられた民間人の犠牲に対する報復という立場からの奇襲作戦の1つに過ぎません。ナクバの時からイスラエルはむしろ民間人をターゲットとすることで恐怖を作り出し服従を強いてきました。ですから占領者イスラエルのジェノサイドと、国際法、国際決議で認められてきた抵抗権を行使する占領されたパレスチナ人を同列に扱ってハマースが悪いという事は言えないという立場です。民間人に犠牲者を出した点はもちろん私も賛成ではありませんが、パレスチナ解放勢力のこの決断と奇襲攻撃の勇気をまず称えています。」

 

② Swing MASAさん

「パレスチナの方々にとって女性解放を語れる余裕は無いのかもしれないですが、普通の暮らしが取り戻せるまで私もガザ緊急アクションで頑張りたいと思います。住んでいらっしゃった当時の女性解放はどんな状況でしたか?」

答え「歴史的にアラブの伝統と文化の中で根付いてきた発展段階の中で、まだまだ封建的側面はありました(日本だって封建的家父長制が今もあるように)。その中で、パレスチナ解放・民主国家を目指す主体であるパレスチナ人たちは、他のどのアラブ諸国よりも女性解放が実現されている場でもありました。当時PLOはアラブの人々の羅針盤のような位置であり、誇りでもありました。特にイスラエルの弾圧の中で女性が戦い、解放を求める事は、二重の戦いでもありましたが、家族単位の文化社会の中で、女性が創造性を持ってリーダーシップを取る家族が多かったのには驚かされました。それほど女性は戦いの中で目覚めていったからだと思います。何度か経験した国連やその他の女性会議などで、資本主義国の女性たちがフェミニズムを唱えている中で、第三世界パレスチナなどの戦いは解放なしに社会革命は難しいと実感し、解放闘争が優先されながら、その戦いを通して女性解放も一歩一歩進めていると言うふうに考えていました。

しかし、歴史的には後のイラン革命の流れからですが、ハマースを含む宗教勢力は、やはり女性の民主主義的な対等を損なう側面が逆に昔よりも増えているのではないかと思います。」

 

③ 岡田さん

「パレスチナに渡る決意をした経過、パレスチナでどのような活動をしたか?」

答え「長くなりますので、ここで語るよりも「戦士たちの記録」(幻冬舎刊)をお読みいただけたら嬉しいです。そこに当時の赤軍派の過ちをどのように超えていくべきか考えていたこと、また、PFLPの中で主にはボランティアとして情報センターで公然と活動していたのですが、リッダ闘争後はイスラエルのモサドによる非軍事部門のガッサン・カナファーニに対する見せしめ爆殺後、PFLPは私へのモサドによる殺害を警戒して、以降PFLPの指揮の下で地下的な非公然の活動を担いつつ活動してきました。」

 

④ 水野行範さん

「感想1 ―1972年のリッダ闘争のことが、日本の新聞で報道された時、京大熊野寮の事務室で、事務員の山城さんが「奥平はんと麻雀を一緒にしたけど、気の良い優しい学生はんやった」と言っていた言葉を思い出します。

感想2 ― 重信さんが逮捕された時、Vサインを笑顔でカメラに向けて差し出した時、革命家の明るさに励まされました。

質問 ― 10.7のハマースの蜂起は、イスラエルに対する反植民地闘争として画期的なものだとは思いますが、その後のイスラエルの報復を予想しなかったのでしょうか。犠牲の多さを考えると、戦術として他の方法がなかったのでしょうか?」

答え「感想についてですが、奥平さんは麻雀をやらないと思います。安田さんは麻雀のプロ級でよくやっていたと聞いています。もしかしたらそれは安田さんのことだったのではないかと思います。またネットで小学館「小説丸」というサイトに高山文彦さんが「リッダ!」というノンフィクションを連載中です。これは奥平さんを主人公とするドキュメントです。時間があれば見てください。

質問に対する答えですが、イスラエルの報復は当然予想していました。犠牲の多さも予想していたと思います。もう占領され併合される瀬戸際にあって、絶望よりも戦うしかなかった戦いを選んだと言うふうに私は現地を知るものとして思います。様々なマイナス面はありながら、ガザの解放勢力が一致団結して戦った「洪水作戦」は、占領に対する抵抗権をしっかりと行使した勇気ある奇襲作戦だと思っています。パレスチナの世論調査によると、現在も人々は過酷なジェノサイドの犠牲にあいながら、ガザ地区でも西岸地区でもハマースに対する支持は10月7日以前より高い支持と評価が続いています。絶望による死か、それとも戦いによる死か?人々の選択肢は限られているせいでしょう。先日、ネタニヤフと矛盾を拡大しているイスラエル軍のハガリ報道官まで、ネタニヤフのハマース壊滅に反対し「ハマースは人々の心に根付いた思想であり壊滅できると考えてるのは誤っている」と言い出す始末です。日本の中で想像することは難しいですが、むこう側に身を置いて想像してみてください。」

 

⑤ 辻惠さん

「イスラエルのガザ虐殺を阻止するためにICCの勧告やICJのネタニヤフへの逮捕状発行は強いアピール力を持つので、大いに歓迎するところですが、実効性を発揮するためには、どういう行動方針があり得るのか。一緒に考えていきたいと考えていますが、重信さんのお考えをお伺いできれば幸いです。」

答え「ICCの判決は、国連に加盟するすべての国に拘束力を持ちます。日本もそうです。これを実行させる力は、政府が判決を無視する国においては主権者である人々の力がやはり決定的です。西側諸国の支配層が現在起きているジェノサイド・ホロコーストをホロコーストと認めない以上、人々の力を持って行動を起こすことが何よりも大切です。現にそれらの力が国際世論となって米欧支配層に影響を与えてきたのが10.7以降です。

アメリカでのユダヤ人を含む人々の虐殺抗議、イスラエル企業への協力や資本投資をやめろと言う学生たちの声が、弾圧を受けながらも、バイデンの(口先だけではありますが、)変化を起こさせました。日本でも軍拡と一体になったイスラエルからのドローン購入を決めている防衛省への抗議、ファナックの日本のロボットによって、武器が作られ、イスラエルの兵器がパレスチナ人を虐殺している現実、日本の身近にあるイスラエルに対する抗議と、パレスチナ人に対する連帯の量を増やし、国会での決議を拡大させていくように戦うことが1つの力です。日本は国連決議でパレスチナ国家承認に賛成しながら、日本国としてパレスチナ国家承認を宣言していません。まずそれをやらせましょう。辻さんの努力に期待します。アメリカの従属から解き放つ、このパレスチナの戦いこそ、バレスチナ人に助けられながら、日本で変革を求める力にしていくのが私たちに必要だと思っています。」

 

⑥ 川瀬千代美さん

「私は特に畜産動物に対する人間の行いに疑問を感じたことから、様々な政治的抑圧、権利の侵害に興味を持ち始め、そこからパレスチナの解放への意識につながりました。その辺についてのお考えがあれば教えていただければと思います。」

答え「ガザにある動物園で何度も空爆に遭いながら、動物たちを守ってきたガザの人たちです。この間イスラエルの空爆で多くの動物が殺されたりしながら、命を守ることを動物園の人々は続けていると言う現地のニュースを聞きました。人間も動物もイスラエルの意図的な飢餓を作り出す政策の犠牲になっています。財源もなくて、動物に日本のように物質的に愛情を注ぐ条件は無いけれども、人々の中で動物も環境も大切にしながら生きているのがパレスチナの人々です。もちろん肉食文化の人々ですが、そこにもきちんとした屠殺など宗教的にも厳しく定められています。私は詳しくは知りませんが、家族を、人間を、仲間を大切にする人々は、動物を大切にします。パレスチナの人々がそうです。」

 



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