リニアの残土と核のゴミ/鎌田慧
リニアの残土と核のゴミ
鎌田 慧(ルポライター)
山梨県都留市の見学センターで、リニア新幹線が目の前を疾走するのを眺めたことがある。時速五百キロ、風のように通り過ぎた、と思いきやすぐまた引き返してくるのが不思議だった。
七年後に品川―名古屋間を四十分で結ぶ、というのだが、静岡県知事も抵抗していてどうなるか分からない。甚大な環境破壊になるのは「こちら特報部」(東京新聞)でも報じられている。トンネル工事で発生する膨大な残土をどうするのか。青森県六ケ所村にもリニア残土が運ばれる、との噂がある。
目下、六ケ所村に建設されている使用済み核燃料の再処理工場は、建設工事開始から二十七年がたって、いまだ完成しない伝説的な工場である。「もんじゅ」のように、廃炉宣言は時間の問題だ。
リニア新幹線は在来の新幹線の四~五倍の電力を消費する。新潟県の柏崎刈羽原発はリニア新幹線の電力需要にあわせたものだ、と山本義隆・技術史研究家が指摘、根源的な批判を加えている(10・8「山﨑博昭プロジェクト」通信)。
リニア新幹線、九兆円の建設予算のうち三兆円を財政投融資で賄うことが、安倍前首相と葛西敬之名誉会長の間で決められた。一企業に三兆円のハチャメチャな優遇である。JR東海の葛西氏は国鉄民営化三人組のひとり。核のゴミとリニアのゴミ。政治腐敗のツケが六ケ所村に押し付けられるのか。
(かまた・さとし)
東京新聞「本音のコラム」(2020年9月22日)から転載。