本の紹介:海老坂武著『戦争文化と愛国心―非戦を考える』

非戦の思想の歴史をたどる

 当10・8山﨑博昭プロジェクト賛同人の海老坂武さん(フランス文学者)が、今年3月、『戦争文化と愛国心――非戦を考える』(みすず書房)という本を出版されました。当プロジェクトの趣旨にも重なるテーマですので、ご紹介します。

 同書は、当時のいわゆる「大東亜戦争」の始まりを国民学校1年生で迎え、「皇国の小国民」であることが最初のアイデンティティであったという著者が、戦争文化はほんとうに解体されたのか、その核心にあった、あの<愛国心>はどうなったのかについて、じっくりと思索したものです。
 海老坂さんは、この本で、丸山眞男、加藤周一、鶴見俊輔らの「戦中世代」と「戦後世代」の様々な言説を見渡しながら、戦争文化と愛国心の歴史、それに立ち向かう非戦の思想の歴史をたどっています。
 ぜひ手に取ってお読みください。

 この本の中に10・8羽田闘争と当プロジェクトに言及した箇所がありますので、ここに引用させていただきます。ちなみに、海老坂さんは、『かくも激しき希望の歳月 1966~1972』(岩波書店)という著書においても「羽田闘争とその報道」という章を設けて、ご自身の体験を回想されています。

●『戦争文化と愛国心』276頁からの引用
「1967年という年は、安保闘争以降、反戦平和の運動が最も盛り上がった年である。とりわけ、10月から11月、当時の首相佐藤栄作の南ベトナム訪問とアメリカ訪問の前後には、日本全国で反戦集会、反戦デモが繰り返されていた。その中で、10月8日、京大生の山﨑博昭が羽田のデモのさなか弁天橋で機動隊に命を奪われたこと(注21)、11月11日エスペランティスト由比忠之進が首相官邸前で首相宛の抗議書を残して焼身自殺をしたことは、こうしたデモの中に身をおいていたものとして忘れることができない。」
(注21)
「山﨑博昭を追悼するためのモニュメントの建設と、この50年を振り返る記念誌の刊行を計画して、この2014年に「10・8山﨑博昭プロジェクト」が立ちあげられ、2017年6月に羽田弁天橋に近い福泉寺に記念碑が建立された。記念誌『かつて10・8羽田闘争があった――山﨑博昭追悼50周年記念「寄稿編」』は2017年10月に合同フォレストから刊行された。」

10・8山﨑博昭プロジェクト 事務局



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