本の紹介:鈴木道彦著『私の1968年』

フランス5月革命のある夜、ジャケットが血に染まった

鈴木道彦さん(フランス文学者、当プロジェクト賛同人)が『私の1968年』を出版された(2018年10月8日、閏月社刊)。本書には、現在においてなお一層切実に問い返されるべきテーマが据えられている。

鈴木さんがかつて、10・8羽田闘争と山﨑博昭君の死、及びそれに伴うマスコミの暴力学生非難キャンペーンと山﨑君の死因の捏造を批判した文章は、今まで2種の書籍に収録されていた。

その一つは『越境の時――1960年代と在日』(集英社新書、2007年4月・第1刷発行)であり、もう一つは『政治暴力と想像力――鈴木道彦評論集』(現代評論社、1970年2月・初版発行)である。

とりわけ、後者には「事実とは何かー大合唱に抗して」と題する『一橋新聞』1967年10月16日号に発表された、この問題に関わって最も早い時期に発表された文章(これは当プロジェクト編『かつて10・8羽田闘争があった――山﨑博昭追悼50周年記念[記録資料篇]』に再録)と、この文章をマスコミ批判として発展させた、哲学者・竹内芳郎さん(故人、当プロジェクト賛同人)との共同執筆である「羽田事件」の報道をめぐって(「朝日新聞への公開状」及び「朝日新聞への公開状」その後)という二つの文章が収録されている。

事務局では、当プロジェクトの発足にあたって、これらの文章を広く紹介するために、当プロジェクトのウェブサイトに掲載したいと考え、鈴木さんと竹内さんにその旨をお願いしたところ、ご両人から快諾をいただいた。

ところが、肝心のその本は当時すでに絶版であった。しかし、鈴木さんがかつて勤務されていた一橋大学の図書館に収蔵されていることがわかり、そこに出向いて当該部分のコピーをとり、それをPDF化したものが、いま当ウェブサイトに掲載されているものである。

本書『私の1968年』は、その貴重な書籍(『政治暴力と想像力』)を若干の増補(『アンガージュマンの思想』1969年、晶文社から)と「書き下ろし」を加えて復刊したものである。

書き下ろし「私の一九六八年」には、1967年の10・8羽田闘争のことに加えて、引き続いて闘われた「11・12第二次羽田闘争に一橋大学の学生と共に参加したこと、ベ平連の活動(「イントレピッド4人の会」「ジャテック」)への参加、「金嬉老事件」(1968年2月)との関わり、パリ留学(1968年4月)の際のサルトル、ボーヴォワールとの会食の思い出、同年5月24日の夜、カルチェラタンを歩いていた際、突然フランスの機動隊の警棒に襲われて、「ジャケット1着が絞れるほどにびっしょりと血に染まった」こと、フランツ・ファノンの著作との出会いのことなど、半世紀を経て初めて明かされる数々の貴重な思い出が記されている。

ぜひとも読んでいただきたい一書である。

10・8山﨑博昭プロジェクト 事務局



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